7.断酒の歓びを酒害に悩む人に伝える

家族は、断酒例会や家族例会に出会うことで、回復への道を歩きはじめた。その結果として、酒害者の断酒への展望が開けたことに気づいた。
家族は過去、様々な苦労を重ねてきたが、断酒会以外では苦痛を語ることができず、気づきをうることができなかった。
今、回復への道を歩いている家族は、酒害の渦中にある酒害者やその家族に、自分の体験を伝えようと考え実行している。それは、気づき、勇気、希望を断酒会によって与えられ、回復が可能になったという自らの体験に基いている。そして、もし断酒会に出会うことがなければ、現在の自分も、家庭もないと考えている
回復途上にある家族が、酒害にまつわる自分の体験や、回復への過程での体験を語りかけるのは、現在、酒害の渦中にある酒害者や家族の気づきに、大きな役割を果たす。ちょうど、断酒会にめぐり合った当初、自分自身が先輩会員や家族から、同様のものを与えられたように。
自分に与えられた恵みを、酒害の渦中にある人に伝えることは、自分が回復しつつあることへの感謝の気持ちの行動化である。また、自分と同じように、回復をめざして歩きつづけている仲間たちに体験を伝えることで、共に回復への道を歩くことができた。
しかもそれだけでなく、酒害に苦しんだころから現在までの体験を、現在苦しんでいる人たちに伝えることで、自ら初心に返らせることができた。
また、回復への道を先に歩いている先輩の家族にとって、その体験談をとうして、自分の過去を掘り起こすのに役立った。勿論、自分の回復の体験を自分の家族に伝えることも、家族全体の回復にとっても大切なものであった。
家族は、酒害の渦中にある家族への、個別の酒害相談に応じることも重要である。この場合、決して指示的にならず、自分の体験を語り、考える素材を提供するにとどめるべきである。
このように断酒会や、家族会や、他の家族のために役立つことは結局自信自尊心を回復することにつながる。また、回復の機会を与えてくれた断酒会や、家族会の行事に積極的に参加することで、社会的貢献をもたらすことになる。
ところが、酒害者の断酒が軌道に乗ると、断酒や断酒会が持つ意味が薄れ、断酒会から離れていく家族がいる。その事で家族は、徐々に酒害者と共通の認識を失い、再び不健康な関係に戻る可能性が強い
また、断酒会のテ−マは「アルコ−ル依存症からの回復」であるので、回復という言葉がつかわれているが、この「回復」ということを、少し掘り下げてみる。
一般的な病気の場合、回復という言葉は発病前の状態にもどることを指す。従って、回復と完治は同意語になる。ところが。アルコ−ル依存症は、断酒が続いて一見、回復しているように見えても、飲めばすぐもとの状態に戻るので、慢性疾患ということになり、生涯をとうしての回復への歩みが必要不可欠になる。家族の共依存にしてもおなじである。
また、もう一つ、酒害者や家族が発病以前の心身の健康を取り戻した時点で、アルコ−ル依存症や共依存からの回復が終了したと仮定しても、それ以後も断酒会をとうして自己改革をすすめているので、そうした人たちはそこから、生涯を通じて成長しつづけることになる。つまり、断酒会でいう「回復」という言葉には、「成長」という意味が含まれているのである。
家族が、「断酒の歓びを酒害に悩む人に伝える」ことは、愛に満ちた人間が、他者に愛を伝えることであるとともに、生涯を通して人間的な成長を続け、幸せな人生が約束されるということである。